素行(身辺)調査と個人情報の取り扱いとは?詳しく解説

近年、情報技術の飛躍的な進化により、容易にさまざまな情報収集やその活用ができるようになってきました。とりわけ、個人情報の取り扱いとその有用性をうまく共存させコントロールすることが求められています。そうした中で、「個人情報」や「個人情報保護法」という言葉に極めて敏感に反応する人もいます。
また、「個人情報保護法」と「プライバシー侵害」が混同されている場合もあります。
そもそも個人情報保護法とは、大量の個人情報を取り扱う事業者が規制の対象です。
つまり、個人情報保護法は個人対個人の関係性には、直接及ばないものなのです。
探偵の素行調査と身辺調査を解説

探偵や興信所で使用する用語は、素行調査、身辺調査という類義語があります。
まずは、その言葉の違いについて、一般的な認識と業界内での定義を説明します。
素行調査とは
素行調査は、調査対象者の行動を調査するものです。
対象者が、いつ誰と居たか、どこに行ったか、何をしていたかなど、その行動の詳細を調べます。
探偵の依頼で多い浮気調査も、この素行調査の一種です。
浮気調査以外には、次のような目的で素行調査が依頼されています。
- 離れて暮らす息子(娘)の生活調査
- 単身赴任の夫(妻)の生活調査
- 夫がギャンブルをしていないか
- 子供が非行に走っていないか
- 息子(娘)の婚約者の素行調査
- 採用予定者の経歴や身元調査
- 従業員の行動調査
- 社内の企業スパイ調査 など
このように、個人の身内に関する調査から企業関連の調査まで、幅広い目的で行われます。
身辺調査とは
身辺調査は、対象人物の素行、行状だけでなく、その人物のこれまでの経歴・履歴や関係があった対象者(個人、組織など)までが問われる調査です。
身辺調査では、日常の生活から経済状況など個人の幅広い身辺にまつわる調査を行います。
例えば、身辺調査の依頼内容が、結婚相手のこれまでの女性関係が知りたい場合、その人物の過去に遡っての女性遍歴があるかを調査します。
素行調査が主に対象者の最近の素行を調べるものとすれば、身辺調査は対象者の現在から過去の出来事までを調べる人物調査になります。
そのため、身辺調査は調査範囲が広く調査の難易度が高い案件がとなります。
法律では、企業・会社などが採用するときの身辺調査は認められています。
ですが、プライバシー侵害や名誉毀損の可能性があるため、労働行政からは身辺調査禁止の通達を出しています。
公務員試験では身辺調査はされていませんが、禁固以上の刑で執行中、または執行猶予中の場合は欠格事項に該当し受験できません。
内定先企業の場合は、採用先の人事部が応募者に対して行います。
採用試験時の大きな問題の1つは、応募者が経歴を詐称していることです。
履歴書や面接で嘘の経歴を示されては、企業がそれを見抜くことは難しく、履歴書の内容をもとに、経歴や前職の勤怠状況と退職理由、性格や健康状態などを調べます。
多くの場合は、採用先の企業が調査会社に依頼して実施します。
特に役員などの重要ポストの採用時は、反社会勢力とつながりなどの調査を含め、綿密に行われます。
素行調査の依頼ケース
主に、尾行・張り込みの行動調査が必要とされるケースは、調査対象者の秘密行動や不正行動の真相を突き止める場面です。
【保険調査】
損害保険や傷害保険の調査では、保険受給者が申告通りの傷病であるのかどうかを調査します。
そのために、尾行・張り込みの行動確認調査をすることが有効となります。
負傷により労災保険や傷病保険を受けているケースで、行動調査から保険不正受給の決定的な証拠を押さえることができます。
【社員の不正調査】
不正行動が疑われる社員の行動確認で、尾行・張り込みの行動調査が威力を発揮します。
情報漏洩や贈収賄、不正なキックバックの受け取りなどで、同業他社や接触が禁止される人物との現場証拠を押さえることも可能です。
【浮気調査】
配偶者間の浮気は、民法で違法行為と定められています。
そのため、浮気事実を公言する人はほとんどいません。
浮気の事実をつきとめるためにも、尾行・張り込みの行動確認調査が有効です。
個人情報保護法との関係

2005年(平成17年)4月1日に「個人情報保護法」が全面施行されました。
また、2007年6月に施行された「探偵業法」により、探偵による個人情報の取り扱いが規定されています。
【探偵業法】
個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。(15条1項)
不正の手段により個人情報を取得してはならない(17条)
あらかじめ本人(調査対象者)の同意を得ないで、個人データを第三者(依頼者など)に提供してはならない。(23条)
その利用目的が、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、対象者の個人情報を取り扱わないこと。
社会的差別の原因となるものであるおそれがあるとき。
ストーカー行為等の規制に関する法律の「つきまとい等」目的やその他違法なものであるおそれがあるとき。
配偶者からの暴力の防止、及び被害者の保護に関する法律の被害者の所在調査目的、その他不当なものであるおそれがあるとき。
探偵が扱う個人情報
探偵業法により、依頼者情報や調査で得た情報は、個人情報を含め秘密の厳守、および適正な管理が定められています。よって、探偵が第三者に漏洩することはありません。
調査会社は、従業員名簿を入手し管理する個人情報取扱い事業者でもあります。
個人情報取扱い事業者は、個人情報保護法の精神に則り適正な入手および厳格な管理をします。
個人情報に接する機会の多い身元調査では、会社採用対象者の身辺調査、結婚前の相手方の素行や人柄、商取引の契約相手方についての債務状況、過去のトラブル有無などを尾行や聞込みにより調査します。
これらの調査は、経歴や学歴に偽り、前会社での仕事ぶりに問題、ギャンブル癖、暴力癖や二股交際、人物の前科、世間の評判など対象者のプライバシーに関する内容が多くを占めます。
また、個人情報を直接調査する浮気相手の素性(住所、氏名や妻子の有無)や遺産相続に関して被相続人の行方、家出人の所在調査は、調査方法や結果の取扱いについて問われることが多い内容です。
また、犯歴、病歴、同和問題、人種、国籍、信条などの「要配慮個人情報」に関しては、差別調査に相当するため探偵は調査することができません。
個人情報保護に反する調査
【利用目的の特定(法15条)】
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用目的をできる限り特定しなければなりません。
利用目的が抽象的な場合は、個人情報保護法違反となります。
例えば、
- 「事業活動に用いるため」
- 「お客様のサービスの向上のため」
などの場合は、違反と考えられます。
【目的外での利用禁止(法16条)】
個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱う場合、あらかじめ本人の同意を得なければなりません。
メールの送信や電話をかける等の同意を得るために、その個人情報を利用することに関しては、特定した利用目的として記載されていなくとも、目的外利用には該当しません。
【不適切な利用の禁止(法16条の2)】
個人情報取扱事業者は、違法な行為や不当な行為を助長したり誘発したりするおそれのある方法により個人情報を取り扱ってはなりません。
利用目的の範囲内であっても、違法な行為や不当な行為を助長・誘発するおそれのある方法で、個人情報を利用することは禁止されています。
- 差別を助長するような個人情報の利用
- 例えば、破産した人の情報を集めてインターネットに公開し、不特定多数の人が見られるようにする。
- 違法な行為につながる可能性のある個人情報の利用
- 違法な行為をする可能性のある者(詐欺集団など)に個人情報を提供する。
などは、違反と考えられます。
【個人情報の適切な取得(法17条)】
個人情報取扱事業者は、偽り等の不正の手段により個人情報を取得してはなりません。
例えば、
- 個人情報の利用目的等について、意図的に虚偽の情報を示して個人情報を取得する場合
- 他の事業者に指示して不正の手段で個人情報を取得させる場合
などは、違反と考えられます。
まとめ
個人の素行を調べる調査では、対象者の交友関係や近隣住民の評判などから情報を聞き出し、人間性などを調べることができます。
しかし、浮気相手に関する個人情報に関わる調査などで、法律に触れた調査をする依頼先も存在します。
そのため、依頼先を選ぶ際は、信頼できるかどうかを見極めることが大切です。